Agriculture & Fisheries
高品質安定生産を実現し、生産性向上を促進

7A1

あいちの次世代型発酵を目指した
醸造用微生物の育種開発と社会実装

削らず、香る。清酒革新のための微生物育種プロジェクト

研究開発の概要

 本研究は、愛知県の次世代型発酵技術の確立を目指し、麹菌・酵母の育種と清酒品質評価技術の開発を三つのターゲットに分けて実施する。ターゲット1では、低精白米でも雑味が少なく、酒粕を低減できる麹菌の選抜と醸造技術の開発を行う。ターゲット2では、GC-MSや官能評価を組み合わせた新たな酒質評価図を構築し、消費者との共通理解を促進する。ターゲット3では、吟醸香を産生する酵母やオフフレーバー低減酵母の育種、米糠を活用したパン・菓子の開発を通じて、清酒副産物の新たな価値創出を図る。これらの取り組みは、原料米の高騰や高精米による歩留まりの低下といった課題に対応しつつ、カーボンニュートラルにも貢献する。さらに、清酒の多様なニーズに応えるための品質評価基準の整備と、官能評価と理化学分析を融合したツールの開発により、新しい酒質の社会実装を加速する。産学行政の連携により、地域資源を活かした高付加価値な清酒と食品の創出、醸造産業のブランド化と経済効果の拡大を目指す。

課題/背景

 2024年に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、愛知県では発酵食文化振興協議会が設立されるなど、清酒の高付加価値化とインバウンド需要の拡大が期待されている。一方で、吟醸酒以外の需要減少、原料米の高騰、猛暑による米の硬化と酒化率低下など、清酒業界は複数の課題に直面している。これらに対応するには、高精白を行わずとも吟醸香を付与する技術的ブレイクスルーが必要であり、麹や酵母の改良が鍵となる。また、食の多様化により求められる清酒像と現状の愛知県産清酒との間にはギャップがあり、それを埋める品質評価の枠組みが未整備である。麹は硬化米の分解を助け、酵母の働きを支える重要な要素であり、酵母は吟醸香生成と発酵の主役を担う。品質評価ツールは、新たな清酒の価値を消費者に伝える上で求められる。これらの課題解決には、産学行政の連携によるオープンイノベーションが不可欠である。

開発内容/目標

 本研究は、以下の目標について実施する。
 目標1では、低精白米でも雑味が少なく、酒粕の低減に寄与する麹菌の選抜を行う。麹菌に突然変異を誘発し、プロテアーゼ産生が少ない変異株を取得・評価し、酵素活性の評価系を構築して有用株を選抜する。
 目標2では、GC-MSやLC-MSによる成分分析と官能検査を組み合わせ、香味や口当たりなどの特徴を分類し、主成分分析や深層学習を活用した新たな酒質評価図の構築を目指す。
 目標3では、吟醸香を産生する清酒酵母、4VGを低減する野生酵母の育種、米糠と野生酵母を活用したパン・菓子の試作を通じて、新たな食品利用の可能性を探る。
 これらの取り組みにより、地域資源を活かした高付加価値な清酒と食品の創出を図る。