Health Care
社会全体での健康づくりを支える

7H2

スペシャリティ酵素を用いた本格的腸活・
機能性ノン・ローアルコールビール製造への挑戦

腸活ビールで愛知から健康寿命延伸

研究開発の概要

 発酵食品は腸内環境の改善や免疫機能の向上など、健康維持に資する食品として注目されている。愛知県は発酵関連産業の集積地であり、その地域的特性からも特に関心を集めてきている。発酵飲料の一例であるビールは、腸内フローラの多様性を向上させる効果がこれまでに報告されており、近年ではホップに含まれる化合物が認知機能低下の予防に寄与する可能性も示唆されるなど、その機能性に関する研究が進展している。一方で、アルコール摂取量が一定量を超過すると、これらの健康効果が減弱または逆転するリスクも指摘されており、飲用形態の見直しが求められている。こうした中、近年の消費者動向として、特に若年層を中心にノンアルコールおよびローアルコールビールの需要が顕著に拡大してきている。しかし、従来の製法ではアルコール除去のために大規模な装置が必要であったり、風味成分の損失によりビール本来の嗜好特性が低下するなどの課題があった。これらを踏まえ、本プロジェクトでは、スペシャリティ酵素技術を応用することにより、発酵過程においてアルコールを生成させず、かつ本場ドイツビールに近い香味を保ったノン・ローアルコールビールの小規模製造技術の確立を目指す。この際、本手法の副生成物として得られるオリゴ糖は腸内環境改善作用を有し、美味しさと機能性の両立を可能にする新たな健康飲料の創出につながることが期待される。

課題/背景

 近年、ノン・ローアルコールビール市場は健康志向の高まりやコロナ禍の影響を受けて急速に拡大している。また、地域に根ざしたクラフトビール醸造所が各地に設立されており、現在なお増加の傾向にあり、全国で800醸造所を超えるようになってきている。最近の研究報告によれば、ビールに含まれるホップ由来のポリフェノールや特定の化合物は、腸内環境の改善や認知機能の維持に寄与する可能性が指摘されており、ビールは機能性飲料としての期待が高まっている。しかし、過剰なアルコール摂取による健康リスクが懸念され、アルコールフリー製品への関心が高まっている。しかし、現在のノン・ローアルコールビール製造方法は大規模な設備や特殊な技術が必要であり、さらにビール本来の美味しさの維持も難しいなど、中小のクラフトビールメーカーにとっては導入が難しいという課題があり、安価で容易な製造方法が求められている。

開発内容/目標

 このプロジェクトでは、酵素技術を活用して、新しいノン・ローアルコールビールの製造手法の開発を目指す。従来の大規模な装置を使わず、麦芽の糖化工程にスペシャリティ酵素を加えることで、アルコールの生成を抑える新しい手法を提案する。また、酵素反応によって生成されるオリゴ糖は腸内環境の改善に役立ち、機能性飲料としての価値を高める。さらに、本場ドイツの醸造技術を取り入れることで、味や香りの深みを保ちながら、小規模製造でも高品質な本格的ビール製品の開発を目指す。本手法は、全国各地の中小クラフトビールメーカーで利用でき、それぞれの醸造所の特徴を活かしつつ、設備投資の負担を軽減し、高機能で美味しいノン・ローアルコールビール製品の開発を可能とする。さらに、日独の国際共同研究により、発酵技術に関するイノベーションの創出や技術者交流を進めることを目指す。